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「母乳の日だそうです」
突然バニーちゃんが破壊力抜群なことを言い出して、その場は地獄絵図と化した。


「突然何を言い出すかと思えば変態兎爆誕とか勘弁してください」
「変態ではありません紳士です。というわけで母乳でないんですか」
「出るかだまれセクハラ眼鏡」
失礼なことを堂々と、明らかにに向かって言ってくる。

殴っていいだろうか。

そんな視線をバディのタイガーに向けると、彼は彼で頭を押さえていて、
彼も苦労しているのだと、結局ただ確認する羽目になっただけだった。

「母乳がでないなら仕方ないですね、妥協しますから揉ませてください」
「妥協じゃなくて諦めろ。誰が揉ませるか」
の敬語もさっさと消え去っている。
この変態相手にいつもの兎仕様敬語などで考えている暇はない。

「なんですかそんなにゆさゆさと揺らしておきながら目の毒なんですよさわりたいんですよおっぱい枕がしたいんですよ」
「触らせるためについてるんじゃないし好きで育ったわけじゃないわー!!」

そんなにおっぱいがいいならアントニオかキースんとこ行きなさい!!
彼らのほうが胸囲はある。揉みがいもさぞあるだろうとバーナビーの頭をつかんで無理矢理視線を向けさせる。
ぐき、とか聞こえた気がするけど気のせい木の精。風の精。

いきなり水を向けられた二人だが、一拍後にはむきーんと胸筋を見せつけるようにポーズをとってくれる。
真面目な人たちだが、ノリはいいのだ。こういうアメリカンなノリ大好き。
十数秒ずつポーズをとっては違うポーズをしてくれる二人を見ながら、

「あれはバストではありませんチェストというんです」
などと兎は失礼なことを言う。
いいじゃないか需要はあるんだぞむきむき。

「私は!あなたの!バストを!もみしだk」


ぱぁん


甲高く通りのいい音が響く。
発生源は薄く頬を赤らめた
いつもスカイハイからのセクハラに耐え、少しの接触や同性からのセクハラならば笑って見過ごす彼女が赤面!?
場はしんと静まった。
さすがにバストバストおっぱいおっぱいと連呼されて羞恥がキャパオーバーしたのか。

女とは思えぬ拳で殴ってくる彼女には珍しいともいえる平手打ち(それもどうか)。
バーナビーも黙ってきょとんと彼女を見上げている。
左手で頬を押さえて、その姿は男女が反転すればどこかで映画になっていそうだ。



張った後の掌もそのままに無表情でバーナビーを睨みつけて、
はその場から去った。


「‥どうみてもお前が悪いわ」
「‥‥そうですね‥」
ビンタで正気を取り戻したのか、
憑き物が落ちてましになったバーナビーが、しかしこの世の終わりのようなどす黒い顔色で落ち込む。
キノコが生えてきそうな雰囲気すら漂っているのは勘違いではないだろう。
しかし所業は事実で巻き戻すことはできない。
おじさんかばってあげらんない、と虎徹も肩をすくめている。

の付き合いの良さに頼りすぎてたんですね‥。理解は、してたんです。
 謝りますよ、もちろん」
顔をあげたバーナビーの目は穏やかに戻っていた。
「それがいいだろうな、ちゃんと謝って許してくれないやつじゃないぜ」

のことを自分よりも知っているような口ぶりに、ちょっとムッとしたのは気のせいだ。



8/2


今日は珍しく朝からほとんどの人数が集まるとあって、
バーナビーも意気込んでジムにやってきたのだが、予定時刻となっても誰も来ない。
きっちりと時間を守るスカイハイでさえ来ていないとはどういうことだ。

学校のあるブルーローズやパオリンは別として他の顔触れはみな来ると言っていたのに。
少し不安になってきて、備え付けの雑誌をめくってみたり、うろついてみたり。
完全に不審者だ。

と、ガヤガヤと人の声が近付いてきた。やっとおでましか、とバーナビーも胸をなでおろし、
嫌みの一つも言おうかと顔を扉に向ける。

「でさー、あれ結構いい色しててさ、つい」
「そういえば珍しい色だったわねぇ」
男性陣が揃って来たことも珍しいが、
それよりもがネイサンと腕を組んでともにやってきたことが問題だ。
何の話かはわからないが、ずいぶんと楽しそうにガールズトークしている。花が飛んでいるようだ。

それを見た瞬間バーナビーは眼鏡が割れるかと思ったという。

お前の眼鏡は別生物なのか?
閑話休題。


気まずいと同時に湧き上がる感情を何とか抑え、
(彼女に謝るんだろ)
嫌味モードをキャンセルし、自分に喝を入れて彼女の元へ足を向ける。

虎徹はその様子を子を見るような目で見ていたが、今の彼に見えようはずもない。

、」
声をかければ、昨日の彼女の面影はなく、それ以前のいつもので。
「その、昨日はすみませんでした」
浅く頭を下げる。顔が見れない。見たくない、のだろうか。

がその謝罪を聞いてニヤリと笑ったのを、隣にいたネイサンが見逃すはずがなかった。
(遊ばれるわよぉ)
もちろん止めやしない。

「今回はバニーちゃんがそういう年頃だったと思って気にしないであげるわ」

頭上から聞きなれた口調でことばが降ってくる。
内容はちょっと訂正したいが、今はそこじゃない。
ほっと息をついて、
「バニーじゃありません‥が、今回は言い返さないでおきます」
なんて強がりを言ってみる。

「じゃあお詫びに今日だけは私にもてあそばれて頂戴ね?」
「仕方ないでs‥‥はい?」

空耳かと聞き返すが、はにっこり笑ったまま、両手に余る程度の大きさの箱を渡してくる。
「‥なんですか、藪から棒に」
「見た通りのプレゼント」
語尾にハートでもついていそうなわくわく声だ。
あけてあけてとせかしてくるから、そのリボンの掛かっていない、しかしデザインボックスであるそれを開けば、
「‥‥‥‥なんなんですか」

「ランジェリー」

「見ればわかります。僕が聞きたいのは、どうみても女性用ってことなんですけど」
「ベビードールとしたくらいなら女物でも入るでしょ?」
「いえそうかもしれませんけdってなんで僕のサイズ知ってるんですか」
「いやー人のつながりって大切よね「しゃべったんですかしゃべったんですねおじさんんんんん」
どう見ても下着にルームウェアにドレスにと大活躍のベビードール。
シフォン生地にフリルとレースがあいまって愛らしく、かつ艶っぽく存在を主張している。
そして問題は(ベビードールも問題だが)それと揃いのショーツが入っていることだ。
これも間違いなく女物にしか見えない。
少しの無茶やお願いなら聞いてやろうと思っていた数分前の自分を殴りたい。そして今すぐ帰りたい。

「ブラつけろとは言わないし、それくらいなら着れるでしょ?」
邪気のないような顔でえげつないことを言う
いくらブラなしでもこれでは変態ではないか!!
バーナビーが更に文句を言おうと口を開くと、目の前に彼女が何かを差し出て。

「ちなみに他の男性陣にも来てもらいました」

焦点を合わせれば、写真。
「ぶっ!?あなた、何を‥!」
「もちろんセクシー下着」
思わず素で吹いてしまったバーナビーがまじまじと見てみれば確かに‥

ノリノリでポーズをとる彼らの姿が。

「‥折紙先輩以外は一応男性用じゃないですか!!なんで僕たちばかり!」
「イワンちゃんは私の趣味というかかわいくてつい‥手が」
手がなんだ。
「じゃあ僕は‥まさか」
ちょっとキュンとしたなんてありませんからね、なんて心でつぶやいたら
「ううん、ネタ」


「なんであなたはいつもいつも期待だけさせて突き放すんですかもっと僕を愛してくださ


バーナビーは血の涙を流しましたとさ。






バニーがベビードルを着たかは、考えてる通りだと思う。


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