リーダー格のNEXTが青い光を纏い、周囲に光をまき散らす。
彼の能力はたしか―
思い当った最悪の事態に、急ぎ発動しようとするが、すでに遅く。
放たれた光弾が過たずヒーローへ向かって飛んでいく。
障害物をすべて貫通しこちらへ、まっすぐ。
能力解放のために足をとめたのがいけなかった。

わたしの、力では―――




A good beginning makes a good ending.

―初めが肝心―





一段高いビルに立っていた影が弓なりに崩れる。

それはつまり屋上にいたレディが被弾してしまったということではないか。
あのシルエットと各自に跳んできた弾道を見る限り、脳天を狙っているようだった。
自分に加え、ほかのみんなは自分の能力なりで防御はできているが。
彼女は生き物に対してはほぼ確実に効くが、すでに手から離れた『モノ』に対しては、常人と変わらない!

「レディ!!」
弾を握りつぶしその場を勢いよく飛び立つ。
屋上側に倒れてくれれば――


しかし悲しいかな。
ビルに比べれば小さな小さな人影は直前の自身の燐光をかすれさせながら落下していく。

尾を引くNEXTの光。まだ、息はある―!?

『レディが落ちていきます!犯人の凶弾にレディ、倒れるーー!!』
TV側の判断か、演出のためか(両方だろう)うまい具合に逆光になる位置をヘリが飛ぶ。

それを横目にさらに加速すれば落下途中でなんとか抱きとめることができた。
撃たれた時に飛ばされたのか、帽子もゴーグルもなく、素顔の額にかすり傷。
防弾仕様だったのだろうか。大きな出血はない。
少しだけ安心して、自身の胸に押しつけるように顔の向きを変える。

『おおっとスカイハイが回りこんでいた!!無事、レディは無事です!!見事スカイハイ救いました!
ここで、事件にも動きがあった模様!レディが倒れる寸前に使った能力で犯人の一人が昏倒!その隙にバーナビーが確保ー!』

犯人も捕まったようだ。
制御できてなかったようだが撃たれながらも、貢献するとは恐れ入る。
うっすらと聞こえてくるヘリの音を聞き流していたら腕に微かな振動。

まだ力の入らない指先が手の甲を叩いている。
「ありがと、スカイハイ。おろして」
降下している間に意識が戻ったのだろう。がうつろだが目を開けていた。
「しかしまだ影響が 「ヒーローが抱っこされたまま退場なんてかっこ悪いでしょ」
人目とテレビがなくなったらまたよろしく、と冗談めかして口に出して。
絶対に無理はしないでくれと、スカイハイが何度も言い含めてからゆっくりと着地し、しぶしぶとを下ろす。

スーツの帽子が見つからないので、ビルの陰にいるうちに首のスカーフを解き、頭に巻きつける。
帽子に負けないほど派手に縛るのは目立たせるため。
大判でよかったとは薄く笑っている。
ほぼ目まで覆うほど深く被るのは素顔をさらしてイメージを壊さないため。

その、視線を隠すため。


『レディが戻ってきます!あの凶弾に耐え自分の足で立ち上がりました!!』


ふらつきつつもスカイハイとともに歩み、テレビカメラに向かって手を振る。
自分の手柄にはならずとも、応援をしてくれるファンに無事を伝えたかったのだろう。
口元にははっきりと笑み。


犯人一味は残らず確保され、中継は終わり、ヒーローたちも撤収する。
そのさなか、はくずおれた。

!!」
頭のスカーフを外すとうつろで焦点の合わない目にスカイハイが映りこむ。
だが彼女は見ていない。
眼球は虚空をうろうろとさまよい続けてどう見てもおかしい。
「だい‥じょ‥」
どこに話し相手がいるかもわからないのに、笑おうとして見せるその姿は痛ましい。
「大丈夫じゃない!しゃべらずに目をつむって、寝ているんだ!」
瞼に手を当ててそっと下ろさせる。
瞼の下で眼球が動いているのが見えるが、大人しく言うことを聞いている
まだ声の理解はできているのか。

彼女を安静にさせて、スカイハイは急いでドクターを呼ぶ。
一人にするわけにはいかない、故に叫ぶことになったが、レディが撃たれたことでもともと控えていたのだろう、
ドクターは程なくその場に現れた。


***


付き添いのドクターによれば軽い脳震盪。
目がさめれば後遺症も残らない程度だろうと。
実際朦朧としていたのは30分ほどであったのだが、スポンサーからの通達で大事をとって1日の完全休養をとることになった。


少し申し訳ないと思いつつも、はそのありがたい命令を受け入れている。
たった一日だが、いつコールがくるかわからないというあの緊張からは解放されるのだ。
少し楽な気持で、今日もジムに来ている。
軽めだがいつもと変わらぬメニューをこなしていると鳴り響くのはお約束。
ヒーローコールである。

「いってらっしゃい」
今日は珍しく見送る側。
先日見つけた面白グッズでもおいてびっくりさせてみようかなんて考えつつ、は室内へ消えた。


結局この出来事は、
犯人の手にかかって情けないという評価されるよりも先に、
スマートな外見と立ち振る舞いと、かよわい感じのギャップがたまらん!というよくわからない層に受けて人気が上がった。
スカーフを解いたことで立派な胸が強調されたから とは考えない。






書きたいところだけ書いてたら短くなったいい例
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